ベッテルとフェルスタッペン、ふたりのチャンピオンに備わっていた"王となるための資質"。元トロロッソ代表トストが語る「ただ速ければいいというモノではない」

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レッドブルがミナルディを買収し、ドライバー育成のためのチーム”トロロッソ”をスタートさせて以来、同チームの代表を務めたフランツ・トストは、数多くの才能が成長していく様を見守ってきた。  その中でも突出しているのは、セバスチャン・ベッテルとマックス・フェルスタッペンである。いずれもトロロッソを卒業した後はレッドブルに昇格し、4度ずつF1チャンピオンに輝いている。  トスト元代表曰く、ふたりが素晴らしい成績を残した理由は、才能だけが全てではない。いずれも、4つの際立った資質を備えていたという。 「チャンピオンには、いつも同じことが言える」  そうトストは語った。 「セバスチャンとマックスは、その点で非常によく似ている。よく『あのふたりのチャンピオンと他のドライバーの違いは何か?』と尋ねられる。私からすれば、いくつかの共通点があるんだ」 「まずマックスは、私がこれまで一緒に仕事をした中でも、最も才能のあるドライバーのひとりだ。セバスチャンも同様だ」 「次に、彼らは自分の仕事に100%集中している。この要素は過小評価されがちだが、非常に重要なんだ。彼らはF1のために生きている。あらゆることに情熱を注ぎ、毎年それを発揮している。この、真の意味でこのスポーツのために生きることができるという点が、非常に重要なんだ」  しかしトストは、ただ速く走るだけがチャンピオンの才能だと言っているわけではない。たとえ速かったとしても限界を超えて走ってしまえば、それがミスに繋がり、結果には繋がらない。そういう意味で安定して走れることも、チャンピオンとして必要な資質だと考えているのだ。 「3つ目の要素は、規律だと考えている。規律の重要性も、過小評価されている。これはあらゆる仕事に当てはまるが、特にF1においては重要だ」  そうトストは言う。 「ここで言う規律とは、単に約束した時間を守ることや、実務的なことに遅れないということだけではない。車内での規律も意味する。例えばドライバーとしては、予選の決定的なラップで、ブレーキをいつもより遅らせるということはあってはいけない。でも、これは簡単なことじゃないんだ」 「予選中には常にプレッシャーがかかり、誰もがいつもよりブレーキを遅らせたいと考えるものだ。しかしどうしてしまうと、事態は悪化する。才能あるドライバーにとって、これは重要な学習の機会なのだ。この点においても、規律を保たなければいけない。そしてレースでも、『今はリスクを負う必要はない。チャンスは後で来る』と認識しなければいけないんだ」  そして周りのことはもちろん、自分のこともしっかりと分析し、強みと弱みをしっかりと把握するということも重要だとトストは説く。 「4つ目のポイントは、彼らが並外れた好奇心と学習意欲を持っていることだ」 そうトストは続けた。 「彼らはライバルやチームメイトを、常に非常に細かく研究しているということだ。そして自分の長所と短所を正確に把握している……自分自身のことを細かく研究しているということも、さらに重要なんだ。取材や他人と話している時にそれを表に出さなくても、彼らは常に自分のことを批判的に見ている。何かミスを犯せば、『今日の自分の行動は間違っていた。二度と同じことを起こしてはいけない』と明確に理解するんだ。そして実際に、二度と同じミスをしない」 「これらの点こそが、チャンピオンにとって最も重要な資質だと、私は考えている」  トスト曰く、これらの才能は実際にF1を走ってからしか評価できず、しかも経験を積むことでその熟練度が深まっていくという。しかしフェルスタッペンには、F3で走っていた頃から、その片鱗を見せていたという。 「雨が降っていた。というか、変わりやすいコンディションだった」  トストはフェルスタッペンがノリスリンクでのF3のレースに出場した時のことを思い起こしながら語った。 「ノリスリンクをF3で1周するには、57〜58秒ほどかかる。マックスはそういう短いサーキットでも、他よりも1周あたり1.5〜2秒も速かった。あの瞬間、『マックスがチャンピオンだ。他のドライバーはライセンスを返上しなければいけないかもしれない』と思った」  F1では、F3と違ってマシンの戦闘力がチームによって大きく異なる。しかしトスト代表は、たとえマシンの面で遅れを取っていたとしても、そのドライバーの実力を見抜くことができる”瞬間”があるモノだと語った。 「私の哲学はシンプルだ。真に優れたドライバーは、常に自分のマシンのパフォーマンスを最大限に引き出す手段を見つけ出すモノだ」  そうトストは言う。 「(2007年)富士スピードウェイでのセバスチャンを思い出して欲しい。彼はマーク・ウェーバーとぶつかるまで、トップ5を走っていた。(ウェーバーはレッドブルのマシンに乗っていたのに)トロロッソのマシンでそれを成し遂げたんだ」 「マックスも同様だ。彼らはマシンの性能を、最大限に引き出すことができる。私はチーム代表として、我々のマシンのポテンシャルではこれ以上はありえないということを理解しているのにだ。セバスチャンとマックスは、その点で同じだった。私は、彼らほどのレベルにいるドライバーを、これまで見たことがない」